大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)14号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

二そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について考察する。

(一) 本願商標及び引用商標は、共に黒く塗りつぶしたいわば、矢じり状の図形(原告は、本願商標について、円輪郭に、黒く塗りつぶした小さな三角形が三個、頭部と両脚部に外接して突設されている旨主張するが、その各三角形の形、大きさ、円に接する角度等からして、三個の三角形が円に突設されているとみるよりは、いわば矢じり状の図形の上に円が載つているとみるのが自然である。)と、一部肉太にした白抜きの大きい円輪郭とを、前者の穂先部に対しほぼ同一の態様及び大きさ割合をもつて組合わせ、かつ、該円輪郭内に図案化したローマ字一字を配した構成から成るものであり、視覚上この全体が一体として感受され、しかも経験則によれば、ローマ字の一字「K」又は「D」のようなものは、商品の種別、型式等を表示する単なる記号又は符合として取引上認識ないし随時使用されやすく、識別力の薄いものであることが明らかであり、右両商標の「K」「D」の文字にしても、そのような記号又は符合として取引者に受取られることが十分考えられるから、両商標は、その構図からして特別の事物、事象を表現したものとはいえず、これより特別の称呼、観念を生じないものといわなければならない。

(二) もつとも、本願商標と引用商標との間には、一応次のような相違点がある。すなわち、本願商標の円輪郭は白抜きの部分が正円形であり、肉太にした部分を含めるとわずかに長円形となるが、引用商標の円輪郭は、肉太にした部分を含めて正円形であり、白抜きの部分のみではわずかに長円形となる。本願商標にあつては、円輪郭が矢じり状の図形よりややはみ出しているのに対し、引用商標は、円輪郭が矢じり状の図形にほぼ内接している。本願商標の矢じり状図形は「縦」(上向き)であるのに対し、引用商標のそれは「横」(右向き)である。矢じり状図形の拡開部分が、引用商標の方が、本願商標よりもやや細身で鋭い。円輪郭内の文字が、本願商標の「K」に対し、引用商標は「D」である。しかしながら、両商標の構成を全体としてみるときは、右の相違点は、いずれも前記の共通の構成にわずかに変化を与える程度の微差にすぎない。矢じり部分の向きの差も、両商標を離隔的に考察するとき、取引者、需要者をしていずれがどちらの出所にかかるものであるかを常に混こうすることなく想起し、十分識別せしめるには足りず、その間に紛こうを生ずるおそれのあることは明らかであるから、顕著な差異ということはできない。

そして、指定商品が原告主張のような基礎材料であることを考え合わせても、以上の判断を左右するに足りないし、その取引の実情の下において、本願商標が特に顕著な識別力を有することを認めしめるに足りる証拠もない。

したがつて、両商標が、時と所を異にして使用された場合、外観の点において相紛らわしく、看者をして彼此混同を生じさせるおそれが十分あるといわければならない。

(三) 以上により、本願商標は、引用商標と類似の商標というべきであり、審決には、原告主張の取消事由は存在しない。

(荒木秀一 石井敬二郎 橋本攻)

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